中国は東アジアをどう変えるか

白石隆、ハウ・カロライン『中国は東アジアをどう変えるか　21世紀の新地域システム』中公新書、2012

中国の台頭が地域に及ぼす影響を議論した本。非常におもしろかった。

この問題に対して本書が提示する視角は4つ。東アジア地域システム、中国周辺諸国の行動、中国の経済協力、東南アジアのチャイニーズの変容。中国の力の増大は避けられないのだが、それが地域における中国を中心とする覇権システムの確立という結果にはならないだろうということが説得的に示される。

中国の周辺諸国の行動（タイ、インドネシア、ベトナム、ミャンマー）も非常に興味深い。各国は「経済成長の政治」という基本路線に乗っており、その限りで中国に協力するのだが、中国との関係を管理し、ヘッジする努力を抜かりなくやっていることが詳細に示される。

本書の白眉は、歴史比較と「アングロ・チャイニーズ」（英語を使うチャイニーズ）を論じる最後の2章。英語でのチャイニーズがどうして簡単に日本語にならないのか、中国の経済力、軍事力の拡大とチャイニーズの影響力の増大ということの間にある距離、経済的福祉と成長を求める大きな流れの中で、アングロ・チャイニーズが占める重要性の増大といったことが、生き生きした形で示される。

中国台頭がもたらす複雑な意味をきれいに整理した良書。巻末の文献解説も詳細で親切。