通貨を考える

中北徹『通貨を考える』、ちくま新書、2012


国際金融の入門書であるが、制度の説明にとどまらず、「円高が進むのはなぜか」、「ユーロ危機はなぜくすぶり続けるのか」、「人民元の国際化は進むのか」、といった問題を、財政と金融の両面から考えるという本。

面倒な問題を扱っているので、簡単ではないが、説明はていねいなので、順を追ってゆっくり読んでいけばちゃんとわかる。

ユーロ危機はやはり政治統合までやらないとダメ、米ドルの基軸通貨としての地位は循環的なものなので簡単には揺るがない、といったような指摘は、まあそうだろうなという感じ。

この本のオリジナルな主張としては、日本円と人民元を合わせて、将来的に地域通貨を作っていこうという提案をしているところ。そんなもの簡単にできるわけないだろうと思うが、著者の言っているボトムアップのアプローチを積み上げていけば、遠い将来の問題としてはそういう可能性もありうるだろう、と考えさせるだけの説得力は持っている。

仮にこの部分を荒唐無稽として捨てるとしても、そのまえの部分は国際金融の基礎的論点の理解に十分役立つ。基本的に良書だと思う。