チャイコフスキーがなぜか好き

亀山郁夫『チャイコフスキーがなぜか好き」、PHP 新書、2012

不可解なタイトルの本。まずチャイコフスキーが好きで何か悪いことがあるのだろうか。

1部の人が馬鹿にしてるかどうかは関係なく、チャイコフスキーは大作曲家である。チャイコフスキーが好きで、なぜかなどと言われる理由は何もない。

次に、この本はチャイコフスキーだけを取り上げているのではない。ロシアの近現代音楽を俯瞰的に取り上げている本である。それもちょっと作曲家の紹介をしてみましたという本ではない。普通だったら名前しか知らないような、あるいは、名前さえ知らないような作曲家でも、聞ける限りはきちんと聴いて評価している。

亀山郁夫はロシア文学が本業なのだから、ロシア音楽を聴いてても別におかしくはないが、これはもはや趣味の域を脱している。CD をまめに集めているだけではなく、ロシア、日本あるいはその他の場所で、聞ける限り実演も聞いているのだ。

ということで、この本を読めば、ロシア音楽の主要な作曲家は誰で、どの曲を聴けばいいのか、およそのことがわかるようになっている。

しかも最後のところで、著者自身がロストロポーヴィチとゲルギエフに直接したインタビュー付き。ある意味非常に贅沢な本である。

この本は、今年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンが、ロシア音楽特集で、そのアンバサダー役に亀山郁夫がなったことから、音楽の紹介のためにかかれた本。音楽祭に行っていればもっと楽しめたのに、と思うと少し残念。