宇宙って面白いの?

岩崎夏海星出彰彦『宇宙って面白いの?』、講談社、2012


もしドラ」の岩崎夏海が、宇宙飛行士の星出彰彦の高校時代の同級生で、それを縁にして、宇宙に行く事がどうしておもしろいのかを、星出彰彦と、JAXAのHTVのプロジェクト・マネージャ、JAXAの宇宙利用ミッション・マネージャ、JAXAの副理事長にインタビューしに行きましたという本。

最初に星出彰彦にインタビューに行くのだが、どうも話が面白くならないので、「これは宇宙飛行士ではなくて、バックヤードの関係者に聞いてきたほうがおもしろいのでは?」ということになり、裏方の3人にインタビューに行く。それで最後に再び星出彰彦にインタビューに行くのだが、岩崎の結論は、「宇宙に関わっている人たちはおもしろいし、彼らが本気で宇宙はおもしろいと思っていることはわかった。だから、たぶん宇宙は面白いんだろうけど、具体的におもしろいのかどうかはよくわからない」というもの。

それじゃ、宇宙はおもしろいのかどうか、岩崎夏海はわからなかったということじゃないの?実際、この本を読んでも、宇宙が面白いのかどうか、素人にはぜんぜんよくわからない。なにしろ、「宇宙は役に立つ」という話はないのである。みんなが宇宙にいける状態をめざすのだと言われても、今は宇宙に行くのに1000万円くらいかかるので、普通の人はそんなことにお金は出さない。それが10分の1になるのに、あと10年はかかるだろうというのだが、宇宙飛行士の星出彰彦自身が、「100万円で宇宙に行けるのなら、行くのか?」と聞かれて、「それは内容による。宇宙のどこまで行けるのか、行って何ができるのかわからないと答えられない」と言っていて、そりゃそうだろうと思う。つまり、宇宙計画のどこがどう意味があるのか、ほとんど説明できてないのである。

この本の目的が、「宇宙のことを知らない人に、JAXAがやっているプロジェクトのどこに意味があるのかを説明する」ことだと書かれているので、この本自体はまるごと失敗作だということになる。まあ、書いてあることはそれなりに面白くないわけではないのだが、読んでいる方がこれを見て、「宇宙はおもしろいので、税金を100億円なり1000億円なり出す値打ちがある」と言うかといえば、たぶんそれはない。

宇宙に行きたい人たちは、「宇宙に行ったらどうなるの」じゃなくて、「とにかく宇宙に行ってみたい」ということで仕事をしているのだということはよくわかった。通信とか、気象観測とか、防衛とか、そういうふつーの宇宙利用の話にはあまり興味はないらしい。まあ、それはJAXAのしごとじゃないのでしょうがないのか。

なんだかJAXAの宣伝というよりは、明らかに逆宣伝にしかなってないような気がするのだが、これでいいのか?ある意味、かなりマズイ出来の本。