徴税権力

落合博実『徴税権力 国税庁の研究』、文藝春秋、2006

これは実におもしろい本。というより、自分が国税庁という役所が何をしているのか、徴税の実態はどのようなものなのかについて、まるっきり知らなかったので、どこを読んでも勉強になることばかり。

多くのページが割かれているのは、やはり政治家の税務調査。金丸事件にはじまって、政治家の税務調査への介入(小泉純一郎も槍玉に上がっている)、政治資金と課税の問題、などなど、政治家に国税が手を突っ込むことがどのくらい難しいかということについて、いろいろと書かれている。

以下、検察との関係、資料調査課の仕事、大企業に対する税務調査、マスコミへの調査、宗教法人(とりわけ創価学会)への調査についてそれぞれ章が立てられている。

個人的に一番おもしろかったのが、マスコミと創価学会に対する調査問題。マスコミ(とくに営業方面)が国税にはかなり弱いこと、取材に対する厳しい秘匿、創価学会に対しては、与党になる以前からほとんど手を出すことができず、与党になってからは定期的な税務調査が一度も入っていないこと。

国税庁も権力(しかも元締めは財務省)なので、当然にパワーゲームの当事者であり、しかもその活動は事件になった時以外にはほとんど目立たない。中小企業や個人は容赦なく調査の対象になり、しかもほとんど抵抗の余地がないのだが、パワーのある主体に対しては話は別ということ。これなら、「歳入庁」の財務省からの切り離しに財務省が激しく抵抗するのもあたりまえ。