テルマエ・ロマエ II-IV

ヤマザキマリテルマエ・ロマエ』II-IV、2010-2012

とりあえず現在出版されているところまでは全部読んだ。I巻を読んだ時点で「なんで現代の日本に飛ばされてきて、風呂のこと以外一切目に入ってないのか?」とちょっと疑問に思っていたのだが、IV巻まで読んでやっと疑問が氷解。

つまりこんなに長く連載を続ける予定がなかったので、そのへんはあえていい加減にしていたが、思いの外好評で連載が伸びたので、「電気の概念」をルシウスに説明して、ちょっとだけ穴埋めをした、ということでした。当然ルシウスに説明する係の人が必要で、その係の人はラテン語を話せなければいけないので、ルシウスが「ディアナ」と呼んでいるさつきを出しました、と。

田舎の温泉旅館でパートタイムの芸者をやっている古代史学者なんて、まるっきり現実味がないが、さつきのキャラがすなおで顔もキレイなので、そこはそこでよし。

そんなつじつま合わせの話はどちらかというとどうでもよく、このマンガを読んで思うのは、現代日本がローマに対してすぐれているということではなくて、その逆、電気も、ガスや重油のボイラーもない、水道もすべて高低差で流さなければならない時代に、あれだけの浴場を作れたというローマの偉大さである。

ルシウスがローマの偉大さを目一杯誇りにしている態度も、見ていてすがすがしい。偉大な文明人は、その偉大さにプライドを保たねばいかんよね。ローマ人しかり、昔のイギリス人しかり、今のアメリカ人は…まあいいか。

今、いろんなスーパー銭湯施設にある、ローマスタイルの浴室は装飾のデザインをちょっとローマっぽくしてみました、というもので、ローマの偉大さが感じ取れない。まあ、労働力をめいっぱい使わなければローマ文明の偉大さは見つけられないからしかたないけど。

各エピソードの後についている、エッセイ「ローマ&風呂 わが愛」は、ルシウス以上にローマへの愛を感じ取れて、読んでいてじわじわくる。マンガと同じくらいのウェイトで、この作品を傑作にしていると思う。

この作品の映画って、客は入っているらしいが、どういう出来になっているのだろうか。ここまで読むとみたいなあ。まだやっている映画館はあるので、なんとかならないことはないのだが、どうせこの映画、しばらくしてテレビに落ちてくるにきまっているし、見に行く時間が簡単に取れないし、しかし見たい。