恋は肉色

菜摘ひかる『恋は肉色』、光文社、2000

風俗嬢、菜摘ひかるの仕事日記。初出は、『週刊宝石』の1998-99年の連載に著者のウェブサイトの記事を足したもの。

とにかく著者は、「流しの風俗嬢」(ソープから、ヘルス、イメクラ等なんでもやっている)を自認する人。流しの風俗嬢というのは、特定の店や業態に拘束されずに、お金さえもらえればどんな仕事でもこなします、という意味。

なので、著者の仕事に対するプロ根性は真剣そのもので、相手の好き嫌いについては一切態度に出さないし、文句も言わない。相手が汗まみれでも、何日も風呂に入ってなくて異臭を放っていても、ニコニコしてチンコをくわえるというもの。日本語が一切できない外国人の扱いもさすがで、カタコトの英語で相手をほめて、ちゃんと一発抜いて満足させている。

そのかわり、仕事以外の誘いには基本的にまったく応じない。いかにも女慣れしている遊び人の手口にもひっかからない。バイトで風俗やってますという人と違って、この切り分けはさすが。

風俗の場合、客との接触が濃い(とにかく一対一でサービス時間中間をもたせ、相手には喜んでもらわなければならない)し、さらに客の多様性がてんでバラバラ(性格も要求もえげつなさも)なので、「どの客にもきちんとしたサービスをする」という基本的なことをするのがきつい。これをきちんとこなしていく著者の職業意識の高さは、いくら時間あたりの賃金が高いとはいえ、サービス業の鑑だろう。

解説を書いているのは斉藤綾子だが、これも著者に惚れ込んだような文章。

風俗嬢かつ文筆業の人はそういないから、今は何をしているのかと思って検索してみたら、なんとこの人、2002年に亡くなっていた。この本が出てから2年ほどで死んでしまったのだ。この本を含めて単著7冊。享年29だったとのこと。

非常に率直な文章なので、歳をとっていればまた別の視点でおもしろい本を書いていただろうに。合掌。