陸軍師団総覧

近現代史編纂会(編)『陸軍師団総覧』、新人物往来社、2000

陸軍についての見開き2ページの解説記事が集められた前半部分と、陸軍各師団の編成期、編成地、歴代師団長、簡単な戦歴がまとめられた後半部分でできている。

前半の陸軍豆知識みたいな部分は、化学戦とか中野学校とかそういう特殊な分野にはそのための本が別にあるのだから、通常の師団に組み込まれている諸兵科部隊のことをもうちょっと詳しく書いて欲しかった。特に平時編成と戦時編成の違い、師団でない独立部隊の編成などなど。といっても、いくつかの師団編成例が師団のパターンごと(四単位師団、三単位師団、支那事変向けの特設師団、留守部隊基幹の師団、治安師団、(本土)決戦師団)にのっているので、この部分はありがたい。

後半は、全師団(戦車師団、高射師団、飛行師団(飛行集団)含む)について、簡単な概要が載っているのだが、これは本当に簡単なことしかわからない。300ページ程度の本一冊に多くのことを求めるのはムリだからしかたがないか。それでも、どの師団がどういうタイプの師団かということが通覧できることに意味がある。

またページ数の割には、配置図や戦闘図もそれなりに掲載されているから、手抜き本というわけではない。

この本は、同じ出版社の『太平洋師団戦史』を単行本化したものということなので、オリジナルのムック本のほうが見たかったのだが、図書館にはこちらしか入っていない。古書価は相当するだろうから(この本でもアマゾンで3000円くらい)仕方ないか。部隊ごとのきちんとした戦歴は、部隊ごとに書かれたモノグラフや戦友会の記録みたいなものを読むしかないようだ。この本は文献リストをつけておいてくれるとありがたかったのだが。