七瀬ふたたび(映画版)

「七瀬ふたたび(映画版)」、芦名星佐藤江梨子ほか出演、小中和哉監督、「七瀬ふたたび」製作委員会、2010

東映チャンネルで流れていたので見てみたが、けっこうよかった。

数年前にNHK少年ドラマシリーズ版が再放送されたものを見たのだが、七瀬役の多岐川裕美ほか、キャストはなかなかいいとして、「ゾンビー軍団」というアホみたいな敵組織の名前とか、安いアクションシーン(まあ少年ドラマですから)には激しく萎えた。

その点、こちらは芦名星という適役を見つけてきたほか、佐藤江梨子もまあいいし、ヘンリー役のダンテ・カーヴァー、ノリオ役(子役)の今井悠貴、刑事役の平泉成、敵組織の河原雅彦吉田栄作など、地味にいいキャスティング。

七瀬サイド(「超」をつけずに、「能力者」と言っている)は、テレパシー、念動力、時間遡行とひととおりできるメンバーが揃っているのだが、ヘンリーの念動力以外は敵を攻撃するためにはほとんど役に立たず、その念動力も人ひとり殺すともうクタクタになってしまうというもので、スナイパーや特殊部隊を揃えている敵組織(とにかく巨大ということしかわからない)にはほとんど無力。このメンバーでなんとか敵の攻撃から逃げ回らなければならない。

テレパシーの能力は、相手の考えがぐにゃぐにゃな字で画面に浮かぶという形で表現され、これはなかなかいいアイディア。とにかく敵の攻撃が間断なく押し寄せてきて、スリルありありの上に、七瀬の周りの人々はけっこう容赦なく殺されていき、ラスボスの吉田栄作が出てきた時には、もはや七瀬自身も瀕死。この吉田栄作も能力者というところも、脚本がよくできていると思う。

ただしラストは原作から大幅に変えてあり、こんなのアリかよというオチになっている。佐藤江梨子はこのオチのためによく役に立っている。まあ原作「七瀬ふたたび」と「エディプスの恋人」もお話としてはちゃんとつながっていないので、これくらいのことはいいけどね。

本編の前に上映された10分間の「前日譚」が「七瀬ふたたび プロローグ」というタイトルでついているのだが、この短編で七瀬の母親役で出てきたのが多岐川裕美。おげんきそうで何より。ちょっとエロい感じの役だというところもよかった。この短編は小中和哉脚本なのだが、監督は中川翔子。いろいろとチャレンジしてるのね。初監督にしてはまあまあよくできていたと思う。

最近テレビでみた映画の中ではひさびさにあまり退屈しないで見られた。これだったら、劇場に行ってもよかったのに。