この素晴らしき世界

「この素晴らしき世界 アジアの現代美術から見る世界の今」、広島市現代美術館

この前の日曜日までやっていた展覧会。最終日になるまで行くの忘れてた。またか…。

特に期待しないで行った分、けっこうおもしろかった。日本人作家は一人。下道基行という人。この人は戦争遺跡の写真を撮っている。しかも廃墟系ではなく、住宅とか、倉庫とか、いろんなところに再利用されている遺跡とか、よく注意してみないとわからないような、ひっそりと立つ遺跡とか、そういうものの写真。

いかにも戦争遺跡らしさをアピールしているような押し出しの強い遺跡も好きなのだが、こういう風景に溶け込んでいるような遺跡もなかなか味があってよいもの。

もうひとり、ジュン・ヤンという人。大陸中国生まれだが、台湾で主に活動しているらしい。この人の作っているビデオは、長さ数メートルの大きな発泡スチロール製の「山」をトラックの荷台に積んだり、海に浮かべて船で引っ張ったりするというもの。このいかにもショボイ感じの緑色のスチロール製の山が「台湾」の不安定な地位を表しているとのこと。居場所なさげなスチロール製の山があっちこっちをさまよっている映像がかなり笑える。

そして一番おもしろかったのが、ティンティン・ウリア。インドネシア生まれの華人である。この人の作品は、手製の小さなパスポート(デザインは世界中の各国の本物からとってきて、それを手描きしている)をドミノ倒しみたいにひたすら床から天井に並べまくるというもの。そして、そのニセパスポートドミノの終着点にはなぜかクレーンゲーム機が一台。この中にはニセパスポートがわしわしと入っていて、美術館の係の人がコインを1枚くれる。それをクレーンに入れて、はい、あなたも運試しに挑戦してはいかが?というもの。パスポートを取れるかどうかが、運しだい、カネしだいというところがポイントなのだが、そんなことよりクレーンゲームが楽しいよ!美術館の人は1枚コインをくれただけだが、十円玉でも機械が動くことを発見してしまった。ニセパスポートはけっこう取りにくい置き方になっていて、けっきょく一部も取れなかったのだが、十円玉を鬼のように入れまくってクレーンに没頭できただけでたのしかった。こういう変な客の風景も含めて展示物の一部になっているということらしい。

外はすずしくて、さわやかに家に帰れた。またクレーンゲームしたいな。