よくひとりぼっちだった

モーリー・ロバートソン『よくひとりぼっちだった』、文藝春秋1984

楽家兼ジャーナリストほかいろいろ、の、モーリー・ロバートソンの最初の著書。ハーバードでの学生時代に書かれたもので、ほぼ大学入学までの時期の自伝。

父親がアメリカ人の医学者、母親が日本人という家に育ったので、アメリカと日本を行ったり来たりして育つ。このパターンは、日本ではいじめを受けるものと相場が決まっているが、実際そのとおりで日本の公立学校ではかなりいじめに会っている。そしていじめられたのは日本だけではなく、アメリカでもガンガンいじめられている。いじめのパターンは違うのだが、アメリカでは学校の中でも人種によって細かくグループ分けがされていて、そのグループのどこにも入れないと非常にややこしいことになるらしい。親の職業の都合でしかたがないとはいえ、いろんなところを連れまわされる子供はたいへんだ。

日本で中学校に上がる年次になると、広島の修道中学に入学。本では名前を伏せてあるが、知っている人にはすぐに分かるように書いてある。特に学校の悪口を書いているわけではないので、なぜ名前を伏せてあるのかはよくわからない。著者には、ここでの学校生活は非常に強いインパクトがあったようで、尊敬できる教師とたくさんの友人、自律的な学習態度を身に着けられたことが書いてある。

この後もアメリカと日本を行ったり来たりして、結局高岡高校から東大理一に合格し、アメリカの一流大学数校(ハーバード、MIT、イェール、プリンストンスタンフォードバークレー)にも入学許可を受けて、結局は東大を中退してハーバードに行ってしまうのだが、そのあたりの詳しいいきさつは書かれていない。

大学生のうちにこの本を書いたのだから、まあエネルギッシュな生活だったのだろう(ハーバードでの学生生活については別に本を書いている)。いろんな学校を転々としながら、身を持していくには、本人の強い性格と、どこかの時点でよい学校にめぐりあって、そこでの経験を自分の中で基盤にしていくことが大切みたいだ。