日本社会の歴史 中

網野善彦『日本社会の歴史』中、岩波新書、1997

網野日本史の中巻。10世紀の摂関政治から14世紀前半の鎌倉幕府滅亡まで。

ここは網野先生のホームグラウンドなので、上巻に比べても筆がのびのびしているような気がする。院、摂関家、大寺社の三者関係のところはけっこう勉強になった。

そして鎌倉時代になってからの、海陸交通、大陸、半島を巻き込んでの商業史、銭貨流通とその担い手は、網野先生の独壇場なので、それが京=西国政権、鎌倉=東国政権とその内部のどの勢力とからんでいたかを交えての叙述はためになりまくり。鎌倉末期の安達泰盛御家人派が農本主義で、平頼綱御内人派が重商主義というのは、なるほどそうだったのかと思わされる。徳政の意義とか、もうちょっといろいろ書いてくれるとよかったかな。

とはいえ、200ページの本で400年分の話をしているので、読みやすさ重視だとこういう記述になるのだろう。下巻もたのしみになってきた。