地図の科学

山岡光治『地図の科学』、サイエンス・アイ新書、2010

この本を買ったのは、「衛星写真でどのように地図を作成しているのか」について、詳しいことを知るためだったのだが、他の部分もいろいろと面白かった。著者は1945年生まれ、国土地理院で長年技官として地図作成に携わったあと、ゼンリンに就職、その後地図屋を開業、という生粋の地図屋さん。

いちばん興味深いところは、三角測量での地図作成の実際についての部分。「剱岳 点の記」を見ていたので、あの映画の地図作成にかかわる部分が突っ込んで理解できておもしろかった。というか、三角測量で地図を作ることがどれほどの手間を要することが、あらためて驚いた。高山の上に三角点を設置する以外にも膨大な手間を要する作業が山ほどあるのだ。

衛星での地図作成についていえば、日本国内の地図作成では衛星観測は離島など、部分的にしか利用されていないという。この理由は陸域観測技術衛星「だいち」のセンサの分解能が低いため。逆に考えれば、アメリカが利用している高分解能のセンサを搭載した衛星なら、地図はできるわけだ。アメリカのイコノスの画像は手に入るのだが、関連情報の開示が不十分なので、イコノス画像の精度は検証中とのこと。さすがにアメリカ、肝心なところは隠してるわけですね。

ほかにも海図の作成技術とか、電子国土基本図とか、いろいろな知識が入っていておもしろかった。この本の内容を正確に理解するためには、高校レベルの数学の知識がちゃんと頭に入っていなければならないが、そこまでわかっていなくても、十分に読むに値する本。地図好きには必読書。