河鍋暁斎戯画集

山口静一、及川茂編『河鍋暁斎戯画集』、岩波文庫、1988

こんな本が岩波文庫で出ていたとはぜんぜん知らなかった。魯文、応賀の戯作の挿絵、「イソップ物語」ほかの翻訳書の挿絵、版画、版本、肉筆画のそれぞれのパートに分けて、代表作の図版があり、解説がついている。そして巻末に、河鍋暁斎その人の比較的ていねいな解説と年譜がついている。

戯画に限った本だし、基本的に白黒だが、これが岩波文庫で670円で売られているということがすばらしい。戯画だから、このサイズでもだいたいのことはわかるし、戯画についている文章は漢字は楷書だからわかるが、ひらがなはくずして書いてあるのでよくわからないから、いちいち解説がついていることが大切。

カラーで見たいとか、もっと大きな判型の本で見たい人は、高いお金を出してそのための本を買うだろう。これは文庫本なのでどこでも持ち歩いてかんたんに見られる。こんなありがたいことはなかなかない。しかも外国の美術館の所蔵品も多く収録されている。さすがに岩波文庫はこういうところにまで手が届いていてあなどれない。じっくり見ているだけで数日かかりそうな本。