9時から5時までの男

スタンリイ・エリン(小笠原豊樹他訳)『9時から5時までの男』、ハヤカワ文庫、2003

この作家は初めて読んだが、文句なしの傑作。短篇集で原題は「ブレッシントン計画、その他奇想小説集」となっているので、なぜ表題になっている「ブレッシントン計画」をそのまま日本語タイトルに持ってこなかったのかがよくわからない。しかし、表題作「9時から5時までの男」も完成度高し。

この本をなぜ読んだかといえば、「ブレッシントン計画」がFM放送のラジオドラマとして、1970年代に放送されていたのを聞いたことがあったから。当時の民法FM局はFM東京系の局しかなかったけど。「邪魔な老人」問題をブラックな方法で一挙に解決してしまいましょうというお話。話の作り方がうまく、特にオチが鋭い。ラジオドラマでは、主人公二人の会話部分のバックに、エルガー「威風堂々第1番」がかかっていて、これがまたかっこよかった。

著者、スタンリイ・エリンは1916年生まれ、1986年没。ロアルド・ダールと同年の生まれで、作家生活もほぼ重なっている。エドガー・アラン・ポー賞を短編部門で2度、長編部門で1度受賞。大作家だったのね。

どの作品もオチがきいているので、ストーリーをあまり書けないが、日本人でこういう短編作家っているんだろうか。名人芸の結晶みたいな作品ばかり。そして基本的にブラックなお話ばかり。これがいい。心が暖かくなる話とかぜんぜん読みたくないので、どれもおもしろかった。そして本当に「ブレッシントン計画」は傑作。読めてよかった。