官僚

飯島勲大下英治『官僚』、青志社、2012

これは非常におもしろかった。小泉元首相の秘書だった飯島勲に、大下英治がインタビューするという形式の本。大下英治は単に質問するだけでなく、自分の意見もどんどんぶつけているので、ほんとうの意味で共著になっている。

タイトルは「官僚」となっているが、実際の内容は官僚の使い方を含めて、飯島勲小泉政権時代に権力をどう動かしてきたのか、現在の民主党政権には何が足りないのか、ということを包括的に論じた本。飯島勲は、公務員制度などいじる必要なし、記者クラブにフリーの記者を入れる必要なし、という考えの人で、そういう意味では「改革派」の立場ではない人。しかし、その目的は「手段は何でもいいから、政策を実現することが大事。そのためには官僚を使えなければ何も出来ない」ということなので、これはこれでつじつまは合っている。

飯島勲の手前味噌が入っているだろうというところを差し引いて読んでも、小泉政権では官邸にちゃんとチームができていて、一体となって総理大臣を支えてきたということがよくわかる。一方、野田政権では、首相補佐官たちが、自分が表に出ようとしていて、ちゃんと主人たる総理大臣を表に立てていないと批判されている。

また、民主党になってからなぜ何もかもグダグダなのかという点については、「党のルールがない、合意形成の仕組みがない、だから何をやろうとしても何も前に進まない」と一刀両断。これもそのとおりだろう。

秘書の役割についての議論も頷かされるものがある。要するに秘書には秘書としての役割をまっとうできる人間をつけなければならず、自分が政治家になろうとするような人間を秘書として使ってはダメ、ということ。飯島自身が、潮時をみてあっさり秘書を退き、その後も野心のあるような行動は何も取っていない人だから説得力がある。

欲を言えば、経済財政諮問会議や他の小泉マシーンと、官邸秘書官チームの関係などにも触れて欲しかったが、それは望蜀で、読んでいるだけでも非常にためになり、かつおもしろい。