海賊の経済学

ピーター・T・リーソン(山形浩生訳)『海賊の経済学 見えざるフックの秘密』、NTT出版、2011

翻訳者推薦の経済学書リストにこれが上がっていたので読んでみたが、非常におもしろい。18世紀から19世紀の海賊の行動を経済学的手法で分析しようという本。トリッキーな議論はなく、本人代理人理論、フリーライダー問題、意思決定コストなどの標準的な経済学の道具を使って、海賊の行動が合理的選択として説明できることが明快に示されている。

はっきりいうと「パイレーツオブカリビアン」シリーズもろくに見ていないので、これを読むのはどうかと思ったのだが、経済学の方だけではなく、海賊の歴史についてちょっと知るためにも勉強になった。海賊は海軍の取締が厳しくなる19世紀後半まで元気に活動していたことはよく知らなかったし。現代の海賊についても最後の章で少し触れてある。

純粋に経済学の勉強の道具としても、海賊についておもしろい本を読みたいという向きにも、同じくすすめられる本。山形浩生の翻訳は非常に読みやすく、巻末の解題もきちんと書かれている。また日本語で出ている海賊関連書も紹介されており、至れり尽くせり。経済学者はサービス精神旺盛な人が多いのかなあ。