戦後史をよみなおす

福井紳一『戦後史をよみなおす』、講談社、2011

著者は駿台予備校の講師で日本史の担当。ということで、この内容が駿台予備学校で教えられているらしいのだが、一読してあぜんとした。もう完全に「全共闘世代の残りかす」が戦後史を勝手に解釈しましたよという本。これ、大学だったら許されるが、高校生や浪人生にこんな内容をつめこんでいいのかね?そりゃ高校ではなくて予備校だから、何を教えても自由だといえば法律上はそのとおり。しかし、法律ではよくても、歴史教育としてこれはダメでしょ。

とにかく「戦後民主主義万歳!」の価値観を詰め込もうという本で、異なる価値観の対話もなければ、現在と過去との対話もない。著者の歴史への見方は1970年代で止まってしまっていて、そこから一歩も出るつもりはないらしい。

例えば、重信房子日本赤軍を「彼らはイスラエル、米国、日本から見れば犯罪者ですが、パレスチナから見れば英雄です」と書いてある。それはそうかも知れないが、彼らが何をやったために英雄扱いされているかをきちんと書かずにこんなことを言っていいんですかね。テルアビブ事件が「偶発的に死者を出した」みたいな書き方でさらっと触れられているが、乗客がいっぱいいるところで撃ちまくれば死者が出ることくらいは知っていて撃っているのだから弁解はきかないでしょ。

こんなのがいるから頭のおかしいことを大学で言い出す人が出てくるわけね。予備校も、生徒に人気があるとか、点数取らせてるというレベルじゃないところで、自分のところの講師が何をやってるか、ちゃんと親に知らせるべきじゃないの?