グルメの真実

友里征耶『グルメの真実』、宝島社新書、2011

この本にはけっこう驚いた。まず内容。食材、調理、メニューと演出、料理人、グルメ業界(評論家と客)のそれぞれの章で、どれだけインチキなことが行われているかがガンガン書いてある。まず食材や料理店のブランドがどれだけあてにならないものかがえんえんと書かれていて、もう唖然。まあ、そんな高いブランド食材は買わないし、2万円以上するお店には行かないので超高級店もどうでもいいが、ミシュランの評価もてんであてにならないという話は読んで納得した。それは最高の料理をいつも食べつけている人でなければ、高級料理屋のガイドブックは書けないことはあたりまえで、信用できる評価者はかんたんにはあつまらない。

ほかの話も、山本益博が店のおごりでヨイショ記事を書いてばかりだというくらいは有名だからともかくとして、女性のライターが料理人と男女関係になってしまって、提灯持ちをやっているとか、まあむちゃくちゃな話ばかり。この本を読むと高いものを食べる気はほとんど失せてしまう。

たしかに考えてみれば、日頃からそんなにぜいたくなものを食べていない人が、2万円だの3万円以上のお金を料理に払うのはおかしいのである。「おいしいものとまずいものの間には明らかに差があるが、おいしいもの同士の評価はできない」と言っていたのは、土屋賢二だが、まったくそのとおりで、7000円のおいしいものと14000円のおいしいものの差がちゃんとわかるのはそういうものをいつも食べている人だけである。普通の人はラーメンの食べ比べくらいで十分なので、高級料理に大金を払う意味はない。

この本のすごいところは、貶している料理人、店、評論家などなどがすべて「実名」というところ。ここまではっきり書いてだいじょうぶなのかと思うが、インチキをしている店は実名で書かないと意味が無いのだからこれは当然のこと。逆に言えば、それをやっていない他の評論家や本、雑誌の記事はまるであてにならないということだ。