色街をゆく

橋本玉泉『色街をゆく』、彩図社、2009

風俗街の探訪記だが、有名なところ、比較的歴史があるところ、一時は栄えていたがすでに潰れてしまったところなど、幅広く取り上げている。取り上げられているのは、吉原、飛田、船橋甲府、京都、ススキノ、西川口、福原、宇都宮、池袋、名古屋、土浦、高松、黄金町、真栄原、川崎、安浦、木辻、生駒。

生駒が昔の遊郭だったなんてことはまったく知らなかったので驚いた。しかも「泊まり」があるらしい。風営法下でそんなことできるのか?また、黄金町や西川口のような警察の取締でほぼ潰れたところを「その後」に回っているところはポイント高い。京都でも、ちゃんと五條楽園に行っている。単なる売春街かと思っていたら、ちゃんと芸妓遊びのサービスがあるとは知らなかった。京都の五花街にはもはや風俗営業はないので、昔の遊郭の名残はここだけ。またもはや史跡にしかなっていない島原もちゃんと歩いている。

とにかくいろいろまめに足を運んで書いていて、初出時(2002-2003)から事情が変わったところは、きちんと取材している。また風俗街の歴史についてもひととおりのことが書かれているので、いつからそこが風俗街になったのかがわかる。知っている人は知っていることだが、現在の風俗街は江戸時代にあった遊郭がそのまま残っているところはほとんどなく、多くは明治以降に新しくできたところがほとんど。そういう経緯もフォローされている。

いろいろ資料性の高い本。マイナーな出版社だし、「風俗ガイドブック」ではないので、たぶん改訂版は出ないだろう。こういう本は定点観測のように10年くらいして再取材して書いてくれるのがいちばんいいのだが。