絶対貧困

石井光太『絶対貧困 世界リアル貧困学講義』、新潮文庫、2011

タイトルどおり、「講義」形式で、世界の貧困層の生活について書かれた本。1日2ドル以下で生活している人が30億人、1日1ドル以下だと12億人ということなので、だいたいそういうレベルの貧困層が、どういう手段で生計を立て、子供を作り育てているかということを著者自身の観察に基づいて書いている。

「スラム編」「路上生活編」「売春編」の三部に分かれているが、一日1ドルとか2ドルとかいうレベルだと、日本でホームレスをしているのとはわけが違う。釜ヶ崎のホームレスでも人によっては一日1000円くらいは稼いでいるのだし、残飯あさりもそんなに難しくはないから、おかしな病気にかからなければかんたんには死なないだろう。しかし1日1ドルでは、いくら物価が安いとはいっても、稼げなければ即飢えるだけ。福祉制度などというぜいたくなものはないので、毎日生き死にがかかっている状態。

臓器売買でも、腎臓一つ売って、手に入るのは10万円から20万円という話。これが買う側になると手術代こみで500万円とか、それ以上になるので、これもブローカーとして途中に入る業者以外はあまりもうからない。とはいえ、1日1ドルしか稼げないのなら10万円=1400ドル弱の金はかなり大きい。

物乞いもなかなかすごく、物乞いの実入りをよくするために、子供の目をつぶしたり、顔を焼いたり、手足を切り落としたりするという話は凄絶。これも当然本人が申し出ているわけはなく、子供に物乞いをさせて稼ぐ犯罪組織がやらせているのである。

売春もいろいろあり、どこの国でも、白人が最も高く買われ、黒人は最下層、しかも黒人の中でもブラウンの黒人の方がブラックの黒人よりも高く買われるのだという。

日本以外でスラムに行ったことがないので、この本に出ていることのほとんどは知らないことばかり。とても勉強になった。インド、バングラデシュあたりなら、行くことがあるかもしれないから、スラムにも行ってみなければ。