暴力団

溝口敦『暴力団』、新潮新書、2011

ベストセラーである。溝口敦の本だからハズレはないだろうと思っていたが、さすが、この分野の白眉。わずか200ページの本だが、あとがきで著者が「暴力団ものの集大成」と言っているだけのことはあり、内容は非常に凝縮されている。

暴力団の活動、資金源、組織構造などひととおりのことがわかりやすく説明されているし、警察との関係についても遠慮なく書かれている。また、外国の犯罪組織との比較の部分は非常に興味深い。特に香港や台湾の犯罪組織は、暴力団と似ているようで重要な所でかなり違った構造をもっていることがよくわかる。この部分は著者自身が香港の犯罪組織のボスに直接インタビューした部分が引用されている。

最近出た本なので、島田紳助引退事件、市川海老蔵殴打事件の背景についても触れられており、「関東連合」のような地下犯罪組織(半グレ集団)についても一章をあてて説明している。

終りの部分で、著者が「暴力団の社会的役割はすでに終わっている」と言っている点はおもしろい。建設業などの重要な資金源は失われつつあり、賭博、薬物販売などのような違法ビジネスも、暴力団として指定を受けていない犯罪組織のほうが動きやすくなっているという。山口組の警察への抵抗は、暴力団の最後の光芒なのかもしれない。