官邸敗北

長谷川幸洋『官邸敗北』、講談社、2010

これも長谷川幸洋の政界実録本。鳩山内閣初期の状況を扱うので、『官僚との死闘七○○日』のある意味では続編みたいなもの。ただし、そちらでは長谷川は政権内部にいたが、民主党政権ではそうではなかったので、よりジャーナリスティックな本になっている。

一読して感じることは、民主党、とくに鳩山由紀夫という人は政権掌握に当たって周到な手配りを何もしていなかったということ。政策に対するアイディアだけがあって、それを実現するための仕組みをどうつくるかの部分がスカスカでは何もできなくてあたりまえ。これは小沢一郎にしてもそうで、小沢はこの方面にかけてはベテランのはずなのに、政府組織の改革をきちんと構想していたようには見えない。

結局国家戦略局構想は、看板倒れ。財務省頼みでというか、財務省にリモコンされているみたいな状態になってしまう。公務員改革が実質的に何も進んでいないことも当然の結果。子供手当てもできなくて当然だ。

おもしろかったのは亀井静香という政治家の人物像。政策だけ聞くと何狂ったこと言ってるの?という政治家だが、あれでちゃんと生き残っているのだから、その政治家としての嗅覚と戦術はただものではない。あれでは鳩山ごときはまったく歯が立たなくてあたりまえ。

政界、官界を中心とする本だが、そこでメディアが果たした役割や、自分の立ち位置についてもきちんとした考察がなされていることもこの本の価値を高めている。やはりこの人の本はすべて読む価値を持っていると確信する。