乙嫁語り 3巻

森薫乙嫁語り』3、エンターブレイン、2011

予約していた『乙嫁語り』の3巻がやっと来た。この巻はけっこう展開あったな。とはいえ、話の主役はアミルとカルルク夫妻から、イギリス人のスミスに移った。

スミスがアンカラに行くための案内人を捜していたところが、市場で馬を盗まれる。馬は帰ってくるが、その時に同じく馬を盗まれた女、タラスの家に招かれる。タラスは未亡人でこの家の5人の息子と順番に結婚したが、全員に死なれた。舅も死んでしまい、子はないので、家にいるのはタラスと姑だけ。姑はまだ若いタラスの将来を心配していて、よそ者のスミスにタラスと結婚してくれるように懇願する。いろいろあったあげく、スミスはタラスと結婚することを決意するが、さらに話がひっくり返ってしまい・・・というようなおはなし。

マンガに描かれていた地図で、このおはなしの舞台が、カスピ海からかなり遠く、アラル海のそのまた向こう、現在のウズベキスタンのあたりだとわかった。まだ中央アジアがロシア領になる前のはなし。それにしてもここからアンカラ?マンガの中では、カスピ海を渡って、ロシア領を突っ切ってカフカス山脈の北を通ってアンカラに出るルート、カスピ海の南岸を迂回してペルシャからアンカラに出るルート、山岳地帯を通っていくルートの三つが示されている。馬で行くのは剣呑な道ばかり。まあ今自動車で行くのもけっこうたいへんだろうが・・・。スミスはイギリスの諜報員と疑われる可能性が強い(実際に、この地に駐留する軍隊にスパイの嫌疑で拘留されている)ので、ロシア領を通っていくことには相当気を遣っている。

話の見どころはスミスとタラスの淡い恋(結局実らない)なのだが、ここはちょっと涙もの。まあ、愛があっても、よそ者が現地人の嫁をもらうのは相当厳しい世界である。

巻末のあとがきマンガはさらに充実。あいかわらず勉強になるわ。4巻もたのしみ。