ルポ最底辺

生田武志『ルポ最底辺 不安定就労と野宿』、ちくま新書、2007

これは大阪市のいわゆる「釜ヶ崎」の実態を知るために読んだ本。著者は、1964年生まれ。学生時代から釜ヶ崎に通っており、日雇い労働、野宿者(ホームレスのこの本での呼び方。支援活動をしている人がよく使う用語)支援に携わっている。どうやって稼いでいるのかというと、文筆活動からの収入もあるだろうが、著者自身が釜ヶ崎で日雇いに応募して働いているのである。

釜ヶ崎の状況がバブル以前と以後でどう変わったか、原発の仕事やアスベスト除去のような危ない仕事のようなエピソードがちりばめらながら、「日雇い労働とはどういうもので、どういう形で人が集められ、いくらくらいのお金をもらっているのか」「日雇い労働すらできないようなホームレス(あまり「野宿者」という言葉を使いたくないのでこちらを使う)はどうやって稼いでいるのか」といった疑問に対してわかりやすく答えられている。

ホームレスの多くは高齢者だが、若者や女性のホームレスもいる。当然ながら女性のホームレスはけっこう生活上危ないことが多い。生活保護の問題を含めたホームレスへの行政の対応、暴動事件など、警察との関係の実態、地域住民からホームレスがどう見られているか、ときどき起こるホームレス襲撃事件の背景、いわゆる「貧困ビジネス」の問題など、この問題の重要な側面について、一通り記述があり、たいへん勉強になった。

著者の立場は、湯浅誠あたりと似たようなもので、まったく賛成できないのだが、ホームレス、特に釜ヶ崎の生活実態がどのようなものかについては教えられるところが多かった。自分の認識の誤りについてもいろいろと気づかされるところが大きかったので著者には感謝。