友達がいないということ

小谷野敦『友達がいないということ』、ちくまプリマー新書、2011

この新書に入っているということは、大人だけでなく10代の子供も読者に想定されているということだが・・・。実際に友達がいない子供が読むとかなり戸惑うはず。何も知らない人にも入りやすいのは前書きだけで、いつものとおり、あっちゃんの博識が披瀝され、古今の友情論が俎上に載せられて、こてんぱんにやられている。

あっちゃんがこの本に書いているとおり、友情について論じている古典の書物は、有産者、エリートが自分たちの環境を当然の前提として書いているわけで、財産も教養もない下々の者は最初から相手にしていない。この本はそういう意味では、友情論の古典的な伝統をついでいる。もちろん、あっちゃんの本なので別に問題はなし。

「友情か、正義か」という章があって、「友達が多いか、少ないかの違いは、まさにこういう、友達の良くない行為を見逃すことができるかどうか、にかかっていると言っても過言ではないだろう」(96ページ)と書いてあって、ビックリした。正義を振り回したがために友達が少ない人なんて、世の中には鉦や太鼓で探してもそうそうはいない。そんなのはあっちゃんだけである。まあ、あっちゃんは実際に恩師だろうと、友人だろうと、容赦なく批判して人間関係を悪くするのをいとわない人なので、言行は一致している。

最後のところで、「もてない男」は笑いに紛らせることができたが、このネタでそれはムリと書いてあってそれには納得。恋愛や結婚ができないということより友達いないとなると、問題は数等深刻。救いのない話をこのくらいにはおもしろくしているのだから、その点はあっちゃんの筆力。

結論は、「友達がいないのはしかたがない、またそれは本人のせいだと決めつけることもできない。あきらめろ」というもの。身もフタもないが、実際にそのとおりなのだからしかたがない。友達をまともに持てないままで一生終わる人など、それなりにいるものだし、他人にはどうしようもないのである。

「孤独な人々のための読書」の章はためになった。特に中国ドラマ「大明帝国 朱元璋」があっちゃんのオススメらしい。チャンネル銀河でやっていたのは知っていたが、契約してないので見てなかった。しかし46話か。長い・・・。

関係ないが、「ロケみつ」は田舎放送局が「ブログ旅グルメ特集」とかいう愚にも付かない回を放送したおかげで、また放送遅れが取り戻せなかった。がっかり。