京橋会館 建物一斉公開イベント

「京橋会館 建物公開イベント」、2011.8.14

この京橋会館というのは、広島でも広島駅に近い市街地にある、一部では有名な廃墟建築ですでに入居者は全員退去、9月から解体がはじまって、跡地はタワーマンション福祉施設の複合ビルになることが決まっているもの。解体されることは前から聞いていたので、6月くらいに夜中と昼間に一人で見にいってきたのだが、この土日を使って、公開イベントがあったので行ってきた。
http://www.oa-hiroshima.org/event/event_2011_01.html

この建築は、1954年に完成した古い建物。4階建ての店舗と住宅が併設されている建物だが、ちょっと変わった建築で、真ん中が開いていて、中庭を囲んでロの字型に建物があるというもの。わたしが子供の時に住んでいた建物が同じ構造だったので、非常に懐かしい。一階部分は基本的に店舗。二階は店舗と?壓がったメゾネット形式の住宅。この一階の部屋にだけ、風呂が付いている。三階、四階は住宅だけだが、こちらは風呂なし。屋上には、物干し場と洗い場(建築当時は洗濯機があまり一般的ではなかった)がある。トイレは小さく、当然和式だが、建築当時は水洗トイレそのものがまだ珍しかったそうだ。

この公開イベントは、建物の外側だけでなく、いくつかの部屋は内部を見せてくれるところがポイント。一人で行ったときは当然中は見られなかったので、今回はラッキーだった。しかも解説ツアーがついていて、素人ではわからないようなところをいろいろ説明してくれていた。それによると、この建物ができる前はここは商店街だったので、できるだけ店舗を増やして、店舗が表通りに面するように建てる必要があり、それでこういう形式になったのではないかということだった。

間取りは部屋によってかなり違うが、狭い部屋は非常に狭く、4畳半くらいのDK(4畳半でもいちおうDK、つまり寝食分離の形式で作ろうという意図だったらしい)と4畳くらいの居室兼寝室、トイレ(入り口のとなりにあって、土間を通らないとトイレに行けない)という非常に狭い部屋から、メゾネット形式の部屋はけっこうひろかったりして、いろいろバリエーションがあったことがわかる。

建物見学と、解説ツアーだけでなく、ライブペイントやコンサート(これは30分くらい聞いただけで失礼した)など、いろいろふろくのイベントがあり、かなり人が来ていた。別に建築マニアというわけではなく、有名な建物だから見に来たとか、元住民とか、いろいろいたようだ。この建物にこれだけ人が集まることはもうないだろう。

この建物の店舗部分は6月まで実際に営業していたのだが、住民はいつまで住んでいたのだろうか。1階部分にある風呂は一人が体をかがめてやっと入れるような狭いものだが、いちおう風呂は風呂。しかし3階、4階にはそれもない。そして、この建物の近所には銭湯はないから(もちろん昔はあったはずだが)、生活は相当にたいへんだったはず。細かいところをいろいろ聞いておけばよかった。その点が心残り。

とにかく暑く、建物の中は風も吹かないので、部屋を見て回っているだけで汗が噴き出してたいへんだった。たぶん住民も毎年大変な夏を過ごしていたことだろう。今日が建物のお葬式みたいなものなので、それに立ち会えてよかった。