高嶺格 とおくてよくみえない

高嶺格 とおくてよくみえない」、広島市現代美術館

前の日曜日までやっていた展覧会。あいかわらず最終日の前日になってから行くことになってしまったが、ゆっくり見られたのでそれはいいことにする。

しかし内容は微妙な展覧会。最初の展示は獣の吠え声みたいなのが聞こえて、扇風機の風で大きな布がゆらゆら揺れているというもの。吠え声みたいなものは、作家の妻の出産時の声だそうな。単に気色悪いわ。

その後の、織物や刺繍でのデザイン作品は、手芸っぽくもあり、昔の名画のパロディにもなっていて、けっこうおもしろかった。

「ベイビー・インサドン」という題の付いた、文章と写真のインスタレーションはいただけない。要は、作家の妻が在日韓国人で、その妻から結婚前に「あなたは差別的だ」と言われたことで作家がいろいろ悩むというものだが、この「悩み」というのが、いかにも「韓国人に昔のことを非難されて謝る日本人」のパターン通りで、くだらない。日本人との結婚を嫌がっていた妻の父が、子供ができて、結婚をあっさり許すというオチも紋切り型でつまらない。そんなのあなたの日記帳にでも書いておいてください、といいたくなるようなもの。

ハングルの習字もちょっとねぇ。ハングルを毛筆で書くのなら、達筆な韓国人がいくらでもいるはず。日本人が習いたての字を掛け物にして意味あるのか?そんなものを「妻との関係性を見直すきっかけで」とか何とか言われても。

作家は越境がどうのというようなことを言いたいのかもしれないが、こういうレベルでそんなことを言われてもこまります。ガイジンが、へたくそな習字を展覧会に出してきたらそれってどうよ。なにか勘違いしている気がするのだが・・・。