迷える者の禅修行

ネルケ無方『迷える者の禅修行 ドイツ人住職が見た日本仏教』新潮新書、2010

日曜日の番組で紹介されていたネルケ無方師の本をさっそく手に入れて読んでみた。これはおもしろい。副題には日本仏教に対する著者の批評っぽいことが書かれていて、実際にそのような部分もあるが、内容は著者自身のこれまでの仏道修行の回顧。迷える者というのは著者が自分自身を言った言葉である。

「こころの時代」がこの本の内容をひっぱってつくっていたこともよくわかった。しかも、1時間の番組なので、出来事の間のつながりがよくわからず、なぜ著者が三度も安泰寺を出たのか、臨済宗の僧堂に入った理由とそこを出た理由などなどについてはさっぱりわからなかった。この本にはその部分も含めて、著者の禅修行の経緯がきちんと書かれていて、非常に腑に落ちた。

基本的に著者は日本仏教の現状には非常に批判的で、特に仏教がファミリービジネスになっていることが日本仏教をダメにしていると考えているのだが、それは心ある仏教者はみな思っていることであり、そんなに驚くようなことでもない。著者はそういう環境で、ちゃんと仏教とは何かということを考えて、つかめるものをつかんで仏教者として生きているのであり、それが貴重なことだと思う。

坐禅中になぜ居眠りをするのか」という問題に対して、いつも居眠りをする雲水を外の渡り廊下に出してしまい、「今日からそこで座れ」というくだりには納得。結局自分で眠らないようにしようとしなければ、居眠りをやめさせることはできない。ちなみにドイツでは会議や電車の中で居眠りしている人はいないとのこと。

「弟子は師匠の鏡である」というところにも非常に納得させられる。他人に教えて自分の思うようにならないことを他人のせいにしてはいけないということだ。それは師匠は弟子の鏡でもあるということ。

最後のところに、「問題はわたしが何をしたかということではなく、この本を読んだあなたがどうするかということですよ」と親切に書いてある。とりあえず、問題はじぶんの中にあるということからはじめなければ。