633爆撃隊

「633爆撃隊」、クリフ・ロバートソン、ハリー・アンドリュース、ジョージ・チャキリスほか出演、ウォルター・グローマン監督、イギリス、1964

戦争映画の王道を行く名作。子供の頃に見たときはドイツ軍がやられるところが悔しかったが、爆撃隊もほぼ全滅していたので、けっこう気に入っていた映画だった。

なんと言っても、飛行機がかっこいい。この映画のために稼働しているモスキートをかき集めてきたのだ。戦後も飛んでいた飛行機ではあるが、よくここまで飛ばせたものだと思う。爆撃機タイプだけでなく、機首に機銃をつけた夜間戦闘機タイプもけっこう出てくる。この夜戦タイプがドイツ軍の対空陣地を撃つと、必ず当たる。当たりすぎ!

1944年頃のおはなし、ヨーロッパ反攻作戦の直前、V2号に使用する特殊燃料の製造工場がノルウェーにあるので、それをつぶせという命令が下る。ところが工場は巨大な岩の下に造られているので普通の方法では爆撃できない。山の間を縫って、上にある岩に大型爆弾を命中させ、岩を落として工場をつぶす作戦が立てられる。目標に到着するだけでも困難なこの任務を引き受けるのが、633飛行隊長のクリフ・ロバートソン。いかにも軍人っぽい顔で、所作のひとつひとつが決まっている。

燃料工場の情報を持ってきたノルウェーレジスタンス要員がジョージ・チャキリス。爆撃任務を成功させるためには事前にドイツの対空陣地を破壊しておかなければならない。そのためにイギリスに来ている妹をおいてノルウェーに帰るのだが、ドイツ軍に捕まってしまい、ゲシュタポに尋問される。ゲシュタポの司令はなんと女。「イルザ ナチ女収容所」はここからネタを取ってきたんじゃないか(もちろん関係ない)と思うくらい、ハマリ役。

この時点でクリフ・ロバートソンとチャキリスの妹は恋仲になっているのだが、チャキリスに余計なことをしゃべられては困るので、ゲシュタポ本部ごと爆破してしまえという命令が。ロバートソンはチャキリスが収容されていることを知りながら、モスキートでゲシュタポ本部を爆撃してしまうのでした。チャキリスの妹は、涙にくれるが、「拷問されている兄を助けてくれてありがとう」とけなげに言い放つ。

いよいよ爆撃任務の当日。レジスタンスが事前に対空陣地を破壊してくれることになっていたはずが、死んだチャキリスから情報が漏れていて、レジスタンスは待ち伏せされて全滅。対空陣地は全部生き残っている。司令部はすでに飛び立ったロバートソンに帰還も可と打電するが、一機も引き返すことはない。

対空陣地も邀撃機も全部生き残っているので、爆撃隊は嵐のように攻撃される。バタバタ撃ち落とされながら、爆弾は6発命中。岩がぐらついたところで最後の1発を当てて、岩は轟然と崩れ落ち、工場は押しつぶされる。しかし生き延びた2機も1機は撃ち落とされ、もう1機も不時着。ロバートソンは不時着後に死んでしまう。

司令官のハリー・アンドリュースは、任務成功を報告するが、「ロケット発射を遅らせただけだ。上陸作戦が成功すればいい」とさくっと言っている。「爆撃隊は全滅しましたが」と部下に言われて、一言「爆撃隊は死なん」。ここが非常にカッコイイ。

任務のためにはすべてを犠牲にすることが英雄的だと割り切った映画を作れた時代の佳作。ロン・グッドウィンの音楽も名作で聞いたら頭から離れない。