吉田豪インタビュー 岸部四郎

吉田豪インタビュー 岸部四郎」、BREAKMax8月号、コアマガジン

あいかわらず読むところがあまりないBREAKMaxだが、この吉田豪インタビューと、辛酸なめ子の連載だけのために読んでいるようなもの。

岸部四郎は、数年前の破産騒動で見たきりだったが(これは98年だったので10年前)、つい最近、「情報ライブミヤネ屋」に蔵書を安く売り飛ばされたというゴシップ記事を読んだな、とこのインタビューで思い出した。吉田健一の全集をわずか3800円でブックオフに売り飛ばされたという、本好きなら激怒ものの話だったのだが、このインタビューでは「風水的には手放した方がいいからあきらめた」とあっさり流している。

これに限らず、インタビューを読んでいても、もはや零落しきった人という感じで、生きる気力があまりないらしい。特に奥さんが亡くなってからが精神的にもひどいらしいのと、破産している訳なので当然お金はなく、「震災の義援金に5000円出したと聞きましたけど」と言われて、「ウソ。5000円は大きいもん」と言っている。ほんとうにお金はほとんどないらしく、「栄養失調で、ビタミンCの注射がありがたい」とか言っている。

もともとお金があってそれなりにいい生活をしていた人が、すっからかんになって体も動かなくなるとこうなってしまうのか、というところを見せられると、かなり寂寥感がある。それでも女性への関心は失せていないようで、同行した女性のカメラマンに「彼氏いる?」とか言っているところがもう泣かせる。たぶんカメラウーマンは20歳代か30歳代やそこらだろう。そんな人に60歳過ぎている人がアプローチしようというのがちょっとどうかと思うが(よっぽどお金があればべつ)、もう若い女性に接するくらいしか楽しみはないようだ。

昔派手に遊んでいた頃のことを聞かれて、「満足感は一切ない。自分への嫌悪感しかない」と答えている。一時でもいい思いができたから、それはそれでアリなのでは?と思うが、落ちぶれてからまわりの人はすべて去ってしまい、結局自分には何も残らなかったということへの後悔の念があるらしい。

1949年生まれだと書かれているので今年61歳。そんなに老け込むような年齢ではないと思うのだが、なにもかもなくしてしまうとこういう風になっても不思議ではないのかもしれない。最初から貧乏になれていれば、貧乏なりの時間の楽しみ方というものもあると思うのだが。

いろいろ考えさせられた記事。