パーマネント野ばら

西原理恵子『パーマネント野ばら』、新潮文庫、2009

この前、映画化されたものがスカパーでかかっていたが、見ないでDVDに落としたまま。しかしこれは先に原作を読んでよかった。これは西原理恵子のマンガの中でも傑作だ。

なんで新潮文庫なのかというと、『新潮45』に連載されていたからなのか。田舎のパーマ屋はおばちゃんたちのたまり場。話はたいていおばちゃんたちの男関係。だいたいむちゃくちゃなもので、刃物が持ち出されたり、車で夫と愛人を轢いてしまったりするようなもの。話はドロドロとしているが、ちゃんと恋の話になっている。というか、ほとんどとりつかれたように恋に明け暮れている女たちのおはなし。踏み倒されても浮気されても、恋にとりつかれているのだから、もう妄執の世界。それでも、みんなそれにすがって生きているのだ。

オールカラーでほとんどのページが派手な原色を使って描かれている。それが逆に登場人物の哀しい生活をあぶりだす。生活は悲惨だがおばちゃんたちはたいてい元気。わいせつな会話の中にぽつぽつと悲しいことがはさみこまれている。こういうところは西原理恵子のうまいところ。犬の世話が面倒になって、結局死なせてしまうエピソードとか、心に刺さる。

映画にしようと思えばできる作品だと思うが、おばちゃんたちの下品な台詞とか、この絵の雰囲気そのものはどうやっても映画にはならないだろうと思う。100ページちょっとの短いマンガだが、心にちょっと穴が開く。