早稲田大学 (1953)

早稲田大学」、小沢栄、佐野周二、舟橋元ほか出演、佐伯清監督、東映、1953

名前の通り、「早稲田大学、その歴史」みたいな映画。1953年というのは東京専門学校設立から七十周年で、この映画はその記念らしい。原作は尾崎士郎。この頃の早稲田は文人だらけだったから、こういう映画をつくっていたのか。

小沢栄の名前を使っていたころの小沢栄太郎大隈重信。よく見るとほんものの大隈重信に微妙に似ている。前半は大隈重信中心の話で、東京専門学校を作ってから小野梓が若くして死んでしまったり、テロリストに爆弾で殺されかけたり、大学人事でもめて学生におしかけられたりする。ほとんど大隈重信半生記みたいなものなので、多少話がよくわからなくても、小沢栄太郎の迫力で押し切っている感じ。

しかし映画は大隈が死んでからも、1953年まで続くので、そこから話がよくわかんなくなる。早稲田を卒業した佐野周二が下宿の娘と仲良くなってヨメにもらい、その子供が近藤勇じゃなかった、舟橋元。ちょっと学生にしては年を食いすぎだろうと思うが、しかたない。この舟橋元が学徒動員で兵隊にとられようとする話が後半の中心。舟橋元の同級生が伊藤雄之助で、これも年齢的にちょっとどうかと思う。舟橋元には恋人がいて、要するにリア充だが兵隊に取られる前にやっちゃえと伊藤雄之助にけしかけられる。もちろん映画の中でそういうけしからぬことは起こらないので、舟橋元はブツブツいいながらなにもしないで戦場に行ってしまい、戦死。女の子は涙、涙。

舟橋元には弟がいて、これが小倉正則という人。この人が1953年に学生をやっている設定にもムリがあるような気がするが、まあいいか。学生は政治のことを考えなければならない!とかアジったりしていて、インフレで学費が上がるのは政治の責任だから、戦争中のような勉学の権利が奪われるようなことを再び起こさないために、政府と戦わなければならないというようなかなりむちゃなことを言っている。学生が警官隊とにらみあっているが、警官はまるっきり悪者で丸腰の学生を警棒でボコボコ殴っている。

「アルバイトは勉学の放棄に等しい」というような台詞がさらっと出てきたりしていて、昔の学生にとってはバイトも悪いこと扱いになっていたのかとおどろいた。

早稲田大学70年の歴史を描く、という趣旨なのはわかっているが、ちょっと構成にムリがありすぎ。無理やりいろんなことをつめこみまくっている。とはいえ、女子学生がほとんど出てこないところやら、早稲田の近くのバラックみたいな商店街(実際にそこから大隈講堂が見えている)とか、50年前の大学生についてのイメージみたいなことがわかったのはおもしろかった。全編ずっと早稲田の校歌が流れているが、かっこいい校歌があって早稲田は得をしてるなー。