拝金

堀江貴文『拝金』、徳間書店、2010

これも図書館に予約していたものがようやく順番で回ってきたのだが、予約後約半年くらいかかった。奥付を見ると、初刷りから一週間たっていないのに三刷。やっぱり売れた本だったから、このくらい時間がかかるのはあたりまえか。

ツイッターで著者のアカウントをフォローしていると、この本を絶賛するツイートがしつこくリツイートされていて、それがあまりに多いので、著者のアカウントからリツイートされたものは見ないように設定しているのだが、この本は正直非常におもしろい。

どこがおもしろいのかというと、著者の実際のビジネスをこの本が追いかけて書かれているからである。プロの小説家であっても、自分の経験と取材から想像できる範囲のフィクションしか書けないわけで、ふつうの小説家ではできない経験をしている人が自分の経験を小説にしていればこれはやっぱりおもしろい。政治家でも実業家でもスポーツ選手でも、おもしろい経験をした人が一通り文章を書く技術をもっていて自伝を書けば、並みの小説よりはよっぽど出来のいいものになるのだ。

ほとんど資金がない状態で、どうやってビジネス戦略を立て、それを数百万、数億、数百億のレベルに拡大していくかという具体的な手順のところが非常に読ませる。しかも余計な修飾的描写抜きで、速いスピードで話が展開する。260ページくらいの本だが、2時間ちょっとあれば読める。それは、この本のストーリーの速さと内容がそういう読み方を要求しているのである。人間があれやこれやと頭の中でぐるぐる考えていることよりも、何を具体的にしているのかをはっきり書くことでこのスピード感が出ているのだと思う。

もうひとつのおもしろいところは、カネの儲け方と同時に、カネを使い切れないくらい持っている人の生活について、この本が細部を描いていること。数十億とか数百億の資産がある人のカネの使い方は、単純なのぞき見としておもしろいし、カネがしこたまあれば人間どうするのかという実験台みたいなこととしてもおもしろい。

先週、次回作『成金』が発売されたばかりだそうなので、こちらは買ってみてもいいかな。