真昼なのに昏い部屋

江國香織『真昼なのに昏い部屋』、講談社、2010

言ってしまえば不倫小説。日本語ぺらぺらで、アメリカのマチズムが嫌いな「ジョーンズさん」、結婚はしているが長期の別居状態で、ほぼ離婚も同然というキャラの人。相手は、「澤井美弥子」、ダンナは老舗会社の御曹司社長、軍艦みたいな豪邸に住んでいる主婦。子どもなし。毎日の家事をきちんとこなすのが生きがいという人。この二人が、いろいろあったあげく、結局デキてしまうというおはなし。

二人がだんだん距離を詰めていくところの描写、ダンナが美弥子の行動に激怒して破局の引き金を引くところ、二人がそれをきっかけにあっというまにくっついてしまうところ、構成はきちんとしている。最後に、ジョーンズさんが以前に感じたときめきを美弥子に感じられなくなってしまったところも、スパイスとしてきいている。

しかし読んでいて、どんどん居心地が悪くなっていくのはなぜ?少なくとも自分にはおよそ切実さが感じられない。まあ江國香織って、そういう「ありえなさそうなところ」で受けている人だから、ファン的にはおいしい話なのだろう。表紙はゴヤの版画だが、これは本の内容を的確に言い当てていてなかなかしぶい。まあ、一番いいのはこの表紙の装丁かな。