名前のない女たち

中村淳彦『名前のない女たち 企画AV女優20人の人生』、宝島社、2002

これは図書館で予約してから読めるまでにかなり時間がかかったので、なぜこの本を予約したのか忘れてしまっていた。で、読んでしまってからようやく思い出したのだが、去年この本(シリーズ)が映画化されたので、その評を読んで(映画自体は見ていない)、本を借りてみようと思ったのだ。

この本の後、続編がつぎつぎに出て5巻シリーズになった最初の巻だが、手にとってかなりの厚さがあることにまず驚く。440ページ以上ある。しかしほんとうにすごいのは中身の方。企画AV女優など、ギャラは安いし待遇も悪いのに対してリスクだけはとても高いような商売をなぜやるのかと思っていたが、この本を読んで少し納得。当然のことながら、いろんな意味で病んでいる人が多いのだ。

だいたいのところ、まともに育っている人は少なく、片親くらいはあたりまえのことで、それにいじめられたり、親に虐待されたり、極貧だったり、それぞれに酷い目にあっている。中でも継父に性的虐待を受け続けていた話とか、自殺未遂の繰り返しとか、ホームレス生活とか、読んでいてもつらくなるような話が続出。

しかも、酷い境遇からAV業界に入ると、人間はさらに病んでいくもので、安い金で人前でセックスを繰り返しさせられるような生活はまともな神経ではつとまらない。やめてパチプロとかになっているのはまだいい方で、完全に精神が壊れた状態になったり、薬物依存、自傷というようなことになる人が多いのだ。

本の中で、著者と同じくAV女優にインタビューをする仕事をしていて精神を病んでしまい、ライターを辞めて姿を消す人の話が出てくるが、病んだ人にインタビューをする仕事はそれ自体がインタビュアーの神経を消耗させる。著者が、相手から距離をとっているので読みやすい本になっているが、こういう本を4冊出すと、著者自身が相当きついだろう。2冊目も読みたいが、しばらく時間をおいてからにしようと思う。