僕は薔薇

原田智子『僕は薔薇』、祥伝社、1994

バレエマンガ。といっても、某大家のとは違ってこっちはギャグまんがである。主人公は、ソ連(ロシアじゃない)の「ポリショイバレエ」のプリンシパルダンサー、「ユーリー・ボンジョヴィ」。このボンジョヴィ様が、バレエ団の若いダンサーにいやがらせをされたり、ゲイ騒動に巻き込まれたり、いろいろある話。

ギャグマンガとはいえ、著者のバレエ好きは本物で、作中のロシア語表記も正しく書かれている。手書きなので、ロシア語はちゃんとできるらしい。誰それがブレジネフの隠し孫だとか、ソ連時代の内輪ネタを知らないとどこがおもしろいのかわからないようなネタもちゃんと出てくる。自分はソ連ネタはわかるが、バレエがわからないので、この作品のモデルとか、そういうのがまったくわからないのが残念。

巻末に「バレエへの誘い」というバレエ紹介の短編が載っているが、紹介されているのはすべてソ連時代の作品(ショスタコーヴィチハチャトゥリアンプロコフィエフ)。批評家が「共産主義的」と皮肉っていることに対して、本気で怒っていたり、作者は共産主義も好きらしい(作中のソ連は別に美化されておらず、ふつうに笑い飛ばされているが)。さすが赤旗日曜版で連載を持っていたというだけのことはある。

この本は「フィールヤングコミックス」だが、広告で紹介されている作品が、森園みるくかわみなみ望月玲子桜沢エリカ岡崎京子くぼた尚子ほか。なつかしいわー。赤旗の連載は単行本になっていないのだろうか。まんが図書館で探してみなければ。