ご近所富士山の「謎」

有坂蓉子『ご近所富士山の「謎」 富士塚御利益散策ガイド』、講談社+α新書、2008

品川神社に行ってみたのは、この本を読んだから。「富士塚」を紹介するガイドブックである。この本を読むまで「富士塚」というものについて、まったく知らなかったのだが、ほとんど関東地方に集中しているらしい。基本的には富士信仰からきたもので、神社の境内に富士山を模してつくられた築山である。

単に築山をつくっただけでは足りなくて、富士講というものをつくってお祭りをやったり、実際にほんものの富士登山をしてみたりと、けっこう忙しいものらしい。といっても現在は富士塚は残っていても、富士講のほうはかなりなくなってしまったらしく、神社でお祭りをする以外は顧みられないことも多いとのこと。

この本で紹介されている富士塚は36。都内が中心だが、千葉、神奈川、埼玉にもある。関東全域で300から1000近くはあるらしい。昔、高層建築などなかった頃は、関東平野の多くでは富士山が見えていたはずなのでそれも納得。マニアの人は数百基の富士塚を回るらしいが、著者は絵描きなので、この本には絵描きとしての視点もはいっているところがポイント。

終わりの章は、富士塚のお祭り、「山開き」や「山仕舞い」のイベントに実際に行ってみたようすも書かれている。関東近辺に住んでいないとなかなか簡単には行けないが、このお祭りはけっこう楽しそう。富士塚は下町地区に多く分布しているようなので、品川以外にもまた行ってみよう。