近代未満の軍人たち

兵藤二十八『兵藤二十八軍学塾 近代未満の軍人たち』、光人社、2009

明治から敗戦までの軍人列伝。『表現者』の連載を単行本化したもの。

取り上げている人物は、上原勇作、板垣征四郎永田鉄山といった誰でも名前は聞いているような人から、竹下勇(海軍大将、刀剣マニア)、和田操(海軍中将、航空機製造のボス)、樋口季一郎(陸軍中将、ソ連通、情報、特務畑)といったようなこの本で初めて名前を聞いたような人まで、幅広く取り上げられているところはよい。

また、陸海軍軍人のキャリアがどういうパスで進み、どこが出世のカギになっているのか、どういうチャンスをつかめば昇進できるのかといったことが読んでいくとよくわかってくるところもよい。基本的におもしろい読み物になっているので、そこもマル。

しかし、著者の「想像」による部分がかなり入っていて、「これって、どこまで信じていいのか」疑問に思うところが少なくない。あとがきで著者は、陸海軍の基本方針は「紙に書かれた史料になっていない」ので、歴史学者が使う方法では肝心なことがわからないといっている。そういう考え方は一概には否定できないが、その方法の当否についてちゃんとした議論を読まないと、これだけ読んで信じる信じないはかんたんには決められない。