あのひととここだけのおしゃべり

よしながふみ『あのひととここだけのおしゃべり』、太田出版、2007

これは近所の書店においてあったので、買おうかと思って奥付を見たら、2007年刊。なんでそんなものが平積みされているのかわからなかったが、これは図書館にもあるだろうと思って探してみたら案の定あった。よって買ってません。よしなが先生ごめんね。

対談集で、対談相手は、やまだないと福田里香三浦しをんこだか和麻羽海野チカ志村貴子萩尾望都。まあ、マンガ家かマンガ好きばかりで、BL作家やBLファンも多いので、本来はBLコミックの読者が読むべき本。BLをまったく読まない自分にはわからないところが多い。

しかし、読んでムダではなかった。特に三浦しをんとの対談では、BLがどうしてBLなのか、ちょっとだけわかった。男は単体萌えだが女は関係性萌えだから、BLが成り立つという話に非常に納得。三浦しをんが、なぜフェミニズムを強調するのか、三浦のエッセイに自分の色恋話が出てこない理由はなんなのかも、ちょっとわかった。

24年組」のマンガが男のインテリ文化人に評判がいいわりに、その男の方は内容を理解していないという指摘は痛烈。たしかに、自分も大島弓子はなんだかよくわからない。あと、「ブロークバックマウンテン」に対して、よしながと三浦が二人とも否定的なところもおもしろかった。わたしは好きなのだが、三浦は「ゲイの恋愛ということだけで悲劇にしている」、よしながは「あの終わり方はないんじゃないか」といっている。

また、直接取り上げられているわけではないのだが、最近話題の東京都の18禁マンガ規制にマンガ家が反対している理由も、この本を読んでより深くわかるようになった。たしかにわざと普通じゃない関係を描きたくてマンガを描いている人には、あれはかなり脅威だろう。個人的には、どこに規制ラインが引かれても、それに引っかからないようにする工夫がとられるはずだと思うので(エロの歴史は全部そう)、この分野がどうなるのか個人的に興味を持ってみているのだが。