中国人の本音

安田峰俊『中国人の本音 中華ネット掲示板を読んでみた』、講談社、2010

中国のインターネットBBSに見られるいろんな意見をまとめた本。著者の立場は、「日中友好」「チャンコロ氏ね」という極端な立場を避けて、なるべく多様な中国国内の見解を紹介しようというもので、この姿勢は受け入れやすい。

中国国内でのネット掲示板における意見の多様性がわかるので、そういう意味では役に立つ本。特に、日本語と中国語の翻訳サイトの運営者が、日中関係などに対しては比較的穏健な意見を持っているのに、話がウイグル人のこととなると、とたんに「あいつらは犯罪者。中国人は被害者だ」と激高するところなど、中国国内での民族問題の複雑生が垣間見えておもしろい。台湾問題、少数民族問題などについての「中国人の大国意識」についての部分も非常に面白い。

それにしても、日本の新聞社やテレビ局は、中国の官製メディアや、官製デモなど、中国政府の公式見解以上の情報源から取ってきたニュースをほとんど拾わないのはどうしたことか?単にさぼっているだけ?それとも、ネット情報などどうでもいいと高をくくっているのだろうか。ほんとうに解せない。

ただ、この本の記述も簡単にはうのみにできない。「広大な中国のインターネット空間での情報の一部を拾ってきても、その情報にどれだけ代表性があるかはわからない」と思うので。著者が意図的に読者を誘導するような人物だとは思わないが、この本に出ていることが、中国のネットメディアをどの程度カバーできているのかはわからない。中国のネットメディアは無視することはできない重要性があるのだが、それをどのように評価するかはかなり困難な問題だと思える。