北朝鮮の歩き方

与田タカオ『北朝鮮の歩き方 未知の国からの招待状』、彩図社、2006

北朝鮮旅行記。といっても著者にとっては最初の北朝鮮旅行で、あまり予習をしていった形跡もない。従って、観察は表面的な範囲を出ない。また、基本的に「ガイドと仲良くする」「ガイドに無理を言わない」という方針で旅をしているので、ちょっとした冒険っぽいテイストすらゼロ。まあ、北朝鮮ツアーで本当に冒険っぽいことをすると非常にめんどうなことになるのでおすすめできないのは確かだが、ガイドの言うなりに全部納得するのもアホらしい。

映画「JSA」を見て、どうしても板門店を見たくなって北朝鮮に行く決意をしたということだが、JSAなんて韓国からでも行けるし(もちろん著者も韓国側からJSAに行っている)、北朝鮮側から入ろうと韓国側から入ろうと、内容は同じである。著者の観光コース、平壌板門店、開城も一番標準的なコースで見て面白いようなものは特にない。

あえていいところを探せば、著者は韓国語がすこしできるので、ガイドや店員らと朝鮮語で会話しているところくらいか。しかし語彙の違いで話が通じないとか、そもそも著者の韓国語自体それほど優秀というわけではなく、何より、論争的なことやきわどいことを何一つ聞いていないので、どこにでもあるような会話にしかなっていない。

せっかく北朝鮮に行ったのに、犬肉やアヒル焼肉(これも、北朝鮮でしか食べられないようなものではないのでおもしろみはそんなにないのだが)すら「食べられない」ということで拒否。こんなヘタレな態度ではおもしろいことは見つからない。

ということで、「ヌルくてもいいから、とにかく一度北朝鮮に行ってみたい」と思っている人へのガイド本以上の価値はない。このくらいの旅行記はブログにいくらでもあるし…。著者にもうちょっとやる気があるのなら、北朝鮮の表に見えるものの裏を多少でも見つけられるだけの事前準備を期待したい。