いざ志願!おひとりさま自衛隊

岡田真理『いざ志願!おひとりさま自衛隊』、文藝春秋、2010

著者はフリーライターで、自衛隊の広報誌『月刊MAMOR』での連載「ヨビジホになってみた」を単行本化したもの。

連載タイトルの通り、まったく自衛隊に縁のなかった著者が、予備自衛官補の採用試験に合格し、年間50日の訓練を経て予備自衛官になるまでのルポルタージュ

この予備自衛官補の採用試験の基準がよくわからないらしく、筆記がよく書けて面接受けもばっちりのいいとこの大学生、のような人が採用されるわけではないらしい。まあ、自衛官(著者が受けたのは、予備自衛官補(一般)のほう)に向いている人を採るわけだから、独自の基準があるのだろう。

入隊後の訓練は、普通の自衛官向けの訓練をそのまま50日にパッケージ(5日間ずつ10回)して圧縮しているので、ぜんぜん経験のない人には新鮮なこと、きついことの連続である。それでも普通に任期制自衛官として任官する人に比べればいくらもつらさの度合いは低いのだろうが、「なるほど兵隊の訓練というのはこういうものですか」ということが素人の目で細かく書いてあるところがポイント。

短い訓練であっても、集団生活と規律の強制で、ふつうの人がいちおう兵隊になっていくさまが、わかりやすく書かれている。「フルメタルジャケット」のレベルにはとても届かないにせよ、訓練で人間が変わっていくようすの描写はとてもおもしろかった。

著者の文体は、ノリがよくてとても読みやすい。自衛隊の広報という目的はじゅうぶん果たしている。著者が女だということも、この本を親しみのあるものにしている一因か。レンジャー部隊の取材もしているそうなので、そちらも本になったら読みたい。