フリーフォール グローバル経済はどこまで落ちるのか

ジョゼフ・E・スティグリッツ(楡井浩一、峯村利哉訳)『フリーフォール グローバル経済はどこまで落ちるのか』、徳間書店、2010

スティグリッツ先生が、金融危機をとりあげてアメリカの経済政策、金融業界と政府、エコノミスト、市場重視の経済学といったものを手厳しく攻撃している本。特に、今回の危機の原因をつくった側の者たちが、事態の収拾を行っていて、そのため本来金融危機で責任を取らなければならない立場の金融業界が税金で延命し、あげくに莫大な利益をあげているとしている。オバマ政権も選挙の時にはウォール街からほとんどの献金をもらっていたのだし、そういうことはいかにもありそう。

スティグリッツの指摘はいろいろとあるのだが、アメリカの従来の消費中心の経済生活のスタイルはすでに破綻していること、そのため世界経済は中期的に供給過剰の状態に陥っていくこと、その結果世界経済はさらに「フリーフォール」状態に陥りかねないこと、といったことが書かれている。

この影響は当然世界レベルに及ぶから、おはなしは深刻。アジアはまだ成長余力があるが、アメリカの需要減少の影響を受けることは避けられない。さらにドル安が進めば、バランスシートの上でも大きな打撃が・・・って、これはいま起こっている最中のことだから全然笑えない。

「処方箋」については、スティグリッツはかなり規模の大きな(ゆえに簡単には実行できない)話しかあげていない。読んでいると、世界経済の見通しはどんどん暗くなるばかり。しかももともと輸出の浮揚効果で保っていて、国内基盤の脆弱な日本への打撃は他国よりもはるかに深刻。景気後退局面は当面続き、日本経済は真剣に土壇場に来そう。読んでいてだんだん暗然となってくる本。