政権交代の経済学

小峰隆夫(編著)『政権交代の経済学』、日経BP社、2010

民主党政権前後の経済政策を、経済学の一般的な概念を使って説明する本。第1部は、二大政党制下の政策接近、政治的景気循環共有地の悲劇といった概念を応用して、民主党政権の政策を解釈し、第2部は、最低賃金引き上げ、子供手当て、日本経済の「輸出依存体質の是正」といった民主党の経済政策を点検する。

経済学の中でも難しい話はなく、初学者が学ぶような基本概念だけを使っているが、民主党政権の経済政策の基本部分に対する説明はちゃんとできている。その分、新しい発見というようなものは少ないが、それでもいくつかの発見はあった。

「外需から内需へ」という議論は概念定義そのものに問題があるので使うべきでないこと、年金問題は数十年の時間をかけて改革していかざるを得ないので、与野党超党派合意を作って改革路線が政権交代の度に動くようなことがないようにしなければならないこと、合計特殊出生率の下げ止まりは晩産化によるもので、出生率低下傾向が反転したものではない可能性が高いこと、等々。

とても読みやすく、2時間かからずに読めるので民主党政権の経済政策の問題点を簡単に知るには便利な本。