投資戦略の発想法2010

木村剛『投資戦略の発想法2010』、ナレッジフォア、2009

著者もとうとう逮捕、起訴されてしまったが、この本は良書である。

2001年に初版を出してから、2005年、2007年、2009年と三回改訂しているのだ。もちろん売れているからできることだが、内容もただのデータの修正だけでなく、基本的な論旨を変えない範囲で、政策や税制の変化など、まめに書き換えている。

この本の投資についての姿勢をそのまま全部守っているわけではないのだが、今となってはそれは後悔するところ。特に証券会社の営業の言うことは聞くな、彼らの話は聞く必要なしというところは、もっと忠実に守るべきだったと思う。本当に彼らはなぜ、客に高い手数料のかかる商品の話だけをして、過去に売った金融商品の実績については何も語らないのか、その理由をよく考えるべきだったと反省する。営業は、客の利益のためではなく、会社が利益を上げられるような商品を勧めているので、結果として収益が出ているかどうかについては彼らは何の責任も負っていないということが、この本を読めばよく理解できる。

とにかく目先の欲をかかずに長期投資に徹すること、投資対象はちゃんと分散しておくこと、生活に必要な資金はリスクの高い投資にあてないこと、といった当たり前のことを繰り返し強調する本だが、人間の弱みで、つい欲につられたり、短期の幸運がいつまでも続くと思い込んだりする心理をよく理解して、そういう迷いに流されていると資産形成を行うことはできないということをしつこいくらい説くところがよく書けているところだと思う。

当分この本の改訂版は出ないのだろうが、著者は一日も早く金融の現場に復帰して、今の経験を本に書いて欲しい。それだけの知的な能力のある人なのだから。