1968年に日本と世界で起こったこと

毎日新聞社(編)『1968年に日本と世界で起こったこと』、毎日新聞社、2009

毎日新聞の連載、「四○年前-<政治の季節>を再考する」を本にしたもの。1968年前後に起こったできごとを一つずつ取り上げて、学者や評論家の寄稿と関係者に対するインタビューでテーマを構成する。最後にこの時期全体についての、橋爪大三郎坪内祐三、平沢剛の鼎談がのっている。

元の連載をはじめた理由が前書きに書いてあり、「60年たった出来事(太平洋戦争)だと関係者はほとんど鬼籍に入ってしまっていて、直接話を聞けない。40年前の出来事であればまだ関係者の多くは存命なので話が聞けるから」だと言っている。40年前というのは、きりのいい数字ではないのでなかなか記念に何かすることは少ないのだが、完全に歴史になってしまっているのと、関係者はまだ存命という二つの条件が重なっているから、回顧するにはちょうどよい頃合いだというのは納得。

テーマはベトナム戦争、大学紛争、文化大革命といった政治系のネタから、ミニスカブーム、少年マンガ、明治百年といったようなネタまでいろいろと取り上げられていて、いろんな意味でこの時期が転換点になっていたことがよくわかるような構成になっている。テーマに寄稿している執筆者と、インタビューの対象者の人選もおおかたまとも。ただ、一つのテーマに与えられている紙数が少ないので、やや突っ込みは足りないような気がする。新聞連載ではこれよりたくさんの内容を盛り込むのは無理なのだろう。

最後の鼎談だが、橋爪大三郎坪内祐三は、1968年から距離をおいて分析的な話をしているのに対して、平沢剛というのは、まるで自分が革命ごっこの主人公になっていて「1968年の闘争、いまだ敗北せず!」とわめいているようなていたらくになっていて、失笑を禁じ得ない。1975年生まれの映画評論家ということなので、サヨク映画にかぶれているうちに現実と幻想の区別がつかなくなっているのかもしれない。橋爪と坪内が明らかに平沢の議論をスルーするように二人で話を進めているのも笑いどころ。