アイ・アム・レジェンド

ロバート・マシスン(尾之上浩司訳)『アイ・アム・レジェンド』、ハヤカワ文庫NV、2007

「地球最後の男 オメガマン」がなつかしかったので、原作本も読むことにした。これは3度目の映画化に合わせて訳し直されたもの。なるほど、けっこうおもしろい。「オメガマン」での設定がどこをどう変えているのかがわかった。そして、これでは原作を読んだ人の「オメガマン」に対する評価が低いのも納得。

「病気のおかげで吸血鬼になった人」の描写とその理由にけっこうなページが割かれているのだが、ロメロが「リビングデッド」でその部分を一切描かなかったのは卓見だと思う。にんにく?十字架?杭打ち?といった吸血鬼の古典設定がむしかえされるのにはちょっと、???という感じ。しかしこの本の場合には、ラスト近くなって、「吸血鬼ではないらしい人間=ルース」が現れる関係で、吸血鬼たちのことをきちんと説明しておく必要があるのはなっとく。また、そこがないと最後の「アイアムレジェンド」の言葉も生きてこないだろう。

ダークな生活の中にも犬との交流にぬくもりを求めようとするところなど、技もきいているし、やはりラストの救いのなさが非常にいいと思う。これを読んでも「オメガマン」は好きだが、やはり甘い話になってしまっている。そういう意味では、改作とはいえ、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は、この話のポイントをよく捕まえている。