社会派くんがゆく! 死闘編

唐沢俊一村崎百郎『社会派くんがゆく! 死闘編』、アスペクト、2004

『社会派くんがゆく!』シリーズの第3巻。収録されているのは、2003年2月から2003年12月までの連載分。ちょうどこの年はイラク戦争開戦の年だったので、その話題がけっこう取り上げられているが、個人的にはそのネタにはそんなに興味がないのでパス。

おもしろかったのは、パナウェーブ事件(これはざらっとテレビを見ただけだったので、元ネタが何かとか、いろいろわかってよかった)、「さくら出版生原稿流出事件」。こっちの方は、著者が二人ともマンガ業界関係者なので、まんだらけがいかにデタラメな商売をしているかについて詳しい説明がエピソード付きで載っていてふむふむと納得。古書店が明らかに盗品の疑いがあるものを知らない振りで買ってさばいていて、マンガ出版社の方は潰れてしまえば保管原稿は債務のカタに差し押さえられてしまう(ひどいのはつぶれてもいないのに、社長が勝手に売りに出す)ので、マンガの原稿がどさどさ流出してしまうというひどい話。まんだらけの社長はとんでもないなあ。

あとは、東京小六女児四人監禁事件。こんなのすっかり忘れていたけど、読んでいるうちにおぼろげながら思い出してきた。小学校六年生の女の子4人が監禁されて、犯人は自殺という事件。しかし知っていたのはここまで。問題なのはこの後の話で、犯人は少女売春のブローカーをしていて顧客名簿を持っていたはずなのに、その話は出ないままで事実上握りつぶされてしまったという話。まあ、小学生相手の少女売春だから客は医者や弁護士ほか相当地位も金もある人間だろう。ロリ売春や児童ポルノで捕まるのはだいたい末端とか、どうでもいい人ばっかりで、エライ人が捕まったとは聞かないからいろいろあったようす。

このシリーズ、3冊目を読んでわかってきたが、超凶悪な大犯罪じゃなくてもそれなりに楽しめるのである。社会的に大問題になったような犯罪事件だと、たいていドキュメンタリーの本が出ていたりするし、それなりに情報が流れていたりする。しかし、どうでもよさげな犯罪の方は、スポーツ新聞か週刊誌で取り上げられるだけで、一般紙を読んでも無視されていたり、おもしろそうなところは全部省かれてしまっていたりするのである。こういう後に残らないネタをていねいにひろって、まとめて突っ込みを入れてくれるのがこのシリーズのありがたいところ。それなりに読者もついていたのだろう。でなければ、村崎が死ぬまで連載が続いて、本が9冊も出たりはしないよね。ずっと続けば、日本犯罪史のスクラップブックとして、貴重な存在になったはずなのに、村崎刺殺は、そういう意味でも非常にざんねん。この鬼畜な二人が突っ込みを入れているからおもしろくなっていたので、他に代わりができる人はいないのだ。