タヌキたちのびっくり東京生活

宮本拓海、しおやてるこNPO都市動物研究会『タヌキたちのびっくり東京生活 ‐都市と野生動物の新しい共存‐』、技術評論社、2008

東京、それも23区内に生息するタヌキの生態についての本。23区内にタヌキなんかいるのか、と思うが、著者の推定では1000頭前後いるのではないかという。それほど大きな緑地でなくても、ある程度の広さの緑地があれば生きていけるらしい。

餌は雑食なので、昆虫や植物など、死んだり弱っている野鳥も食べているようだ。これに人間の出す生ゴミも加わる。それなりにいるはずなのに、めったに見ることがないのは、タヌキが夜行性で、しかも警戒心が強く、あまり人前に出てこないから。それでもある程度の準備をすれば、実物のタヌキを観察したり撮影したりすることができ、実際のレポートものっている。

タヌキは最近出現したのではなく、昔から東京に住んでいた。東京は比較的開発の歴史が浅く、ごく最近まで多くの緑地が残っていたので、タヌキの生活の場所もあったのだ。主に武蔵野台地を中心とした地域が生息域になっているらしい。23区内もある程度「里山」だったのである。

著者の探究が進んでいく過程がとてもおもしろいし、マンガを描いているしおやてるこもおもしろい。都市である一方、自然を残している東京の環境についても考えさせられる。